【移住者インタビュー】すべて“ちまこま喫茶”から始まった、猪名川町での暮らし

猪名川町に住む日高みどりさんは、“ちまこま喫茶”の常連。
かつては、兵庫県尼崎市・園田で、ご主人の隆志さん、双子のお嬢さん 優乃さん・綾乃さん、そして2匹の愛犬・パグの小春ちゃん・小次郎くんと暮らしていました。

猪名川町へ移住したのは、2022年9月のこと。
そのわずか2ヶ月後の11月、小春ちゃんは、まるでみどりさん達の新しいスタートを見届けたかのように、空へと帰っていきました。

小春ちゃんの命日を前に、すでに独立している2人のお嬢さんが帰省し、久しぶりに家族が揃ったこの日。みどりさんご夫妻にインタビューをお願いしました。

綾乃さんがお父さん・隆志さんの髪の毛をチェック。みどりさんに代わって夕食の準備をするのは優乃さん

【プロフィール】… Iターン移住
日高隆志さん(53歳)溶接業
日高みどりさん(51歳)主婦 
小次郎くん:(15歳)

目次

“ちまこま喫茶”へ通い詰める日々

目は開けていますが、しっかりお昼寝中の小次郎君

移住前から、“ちまこま喫茶”の常連だったみどりさん。お店に通うきっかけとなったのは、“道の駅”でした。

みどりさん:
「以前から夫のバイクで、猪名川町へは足を運んでいたんです、大野山の展望台まで夜景を見に。その途中に“道の駅”があって、気になりつつも夜しか行かないので立ち寄る機会がなくて」

しかし、思いがけないことからチャンスが訪れます。みどりさんは43歳にして、車の免許を取得することに。これは、ご家族を病院まで送迎するためのものでしたが、練習コースとしてピッタリだったのが、その“道の駅”。ならば、ついでに一息つけるカフェを…と、探して見つけたのが「ちまこま喫茶」でした。
しかし、駐車場が見つからなかったり上手く停めることができず、5回目にしてようやく辿り着くことができました。

みどりさん:
「すぐ、好きになりました。sahoさんのオーラやじゃばおさんの人柄、お店の雰囲気…どれもとても心地良くて。小春や小次郎も一緒に、多い時には週に2〜3回通いました。そこでたくさんの友達ができたんです」

お店の営業後に、sahoさんたちと夕食を共にしてから帰ることもしばしば。そうするうちに「ちまこま喫茶」は、みどりさんにとって第二の我が家のような存在となりました。

sahoさんが遊んでいるのは、この日綾乃さんが連れてきたエマちゃん

みどりさん:
「私が猪名川町に越した理由は、そこに“ちまこま喫茶”があったから。本当にそれだけなんです(笑)特に田舎暮らしがしたかったわけではありません」

多くの人が移住後に人間関係を築いていくなか、みどりさんにはすでに「ちまこま喫茶」という拠点がありました。その繋がりがあったからこそ、移住は特別な決断ではなく、これまでの暮らしをそのまま引き継ぐような感覚だったと言います。

人生を見つめ直した40代

猪名川町で過ごす時間が長くなるにつれ、移住への思いを膨らませていったみどりさん。その背景には、こんな思いがありました。

(左)隆志さん(右)みどりさんと小次郎くん

みどりさん:
「うちは母方の家系が短命で、母は私が20歳の時に他界。祖母や伯母も48歳までに亡くなっています。だから、自分も48歳までは生きられないとずっと思い込んでいたんです。
だから、45歳を過ぎたら残りの人生は行きたいところへ行って、好きなことをしよう、と。
園田は生まれ育った場所ですが、父を見送って娘たちも独立するとそこに縛られる意味がなくなって。すると、私が幸せに生きていける場所は、ここではないと考えるようになりました」

みどりさんの“好き”が詰まった部屋

当時、尼崎市内で働いていたご主人の隆志さんは、移住についてどのように考えていたのでしょうか。

隆志さん:
「移住しても、職場まではバイクで1時間程度。
まぁ、通えるだろうと。仮に仕事を変えることになっても、過去に何度か転職していたので抵抗はありませんでした。ただ、田舎に行くと、これまでのように気軽に飲みに行けなくなるなぁとは思いましたけど(笑)」

みどりさん:
「主人はこれまで一度も私に「ダメ」と言ったことがないんです。園田の家(新築の三階建て)を買うときも「家が欲しい」と言ったら「いいんちゃう」。「犬が欲しい」と言ったときも「いいんちゃう」。いつもそんな感じで、私の好きにさせてくれました」

隆志さんの仕事に対するフットワークの軽さと、居住地へのこだわりの少なさもあり、猪名川町への移住計画は自然と進み始めます。

自宅を売却、でも住む家がない?!

取材中、小次郎君の吸水タイムも挟みつつ「美味しいワン」

猪名川町の移住先は、“ちまこま喫茶”から車で10分以内と決め、家探しをスタート。

みどりさん:
「ただ、ほとんど土地勘がなくて。地図を見て「ここ良さそう」と思って行ってみても、実際は急な坂の上だったり。見てみないと分からないことが多かったですね。

それに、家を買おうにも手持ちの資金が少なくて候補があっても断られてばかり。次の家が見つかる前に、自宅が売れてしまって『さぁ、どうする?!』って大慌て。sahoさん達にも“家を売ってホームレスにでもなるの?”って、心配されましたね(笑)」

一時的に猪名川町で家を借りて仮住まいをしながら家探しを続け、“ちまこま喫茶”から車で5分ほどの場所に中古物件を購入。一階部分のみをリフォームして、ようやく落ち着くことができました。

リフォームを手掛けたじゃばお君(アイシンク設計事務所)と、また何やら相談中


ただ、都会育ちのお嬢さん2人にとって、田舎の虫は天敵!なかなか実家にも足を向けられず、この日は一年ぶりの帰省となりました。

静かな猪名川町での新生活

庭仕事もみどりさんの楽しみのひとつ

猪名川町に移住して、なにか変化はあったのでしょうか。

隆志さん:
「まずは、静けさに驚きました。
以前は線路沿いに住んでいて電車の音が常に聞こえていたんですが、それが突然なくなって、最初は逆に怖かった」

みどりさん:
「静けさだけでなく、窓からの景色も一変しましたね。空が広くて、星や月がきれいに見えます。それまでの電線越しに眺めていた景色とはまるで違う。ただ、覚悟していたとはいえ、寒さは想像以上でした」

車があることで生活には不便を感じていない、というお2人。

みどりさん:
「近くに診療所もあるし、となりの川西市まで行けば総合病院もあるので、その点は心配していません。それに、犬を飼っているので、動物病院もたくさんあるのは助かります。散歩できる公園もいっぱいあって、子犬の頃に走らせてあげたかったなぁ〜と思うことも。あ、強いて言えば、映画館があれば良かったですね」

隆志さん:
「僕は、仕事の選択肢が増えればと思います。
年齢制限や求人の少なさはネックだし、大型の物流倉庫はあるけど月に安定した額を稼ぐとなると難しい。もっと仕事の幅が広がれば、移住を決断しやすくなる気がします」

隆志さんの言葉から、地域の暮らしを支える体制づくりの重要性を再認識させられました。

「ちまこま喫茶」から繋がった新しい暮らし

提供画像:小春ちゃんが初めて“ちまこま喫茶”を訪れた日

みどりさん:
「主人には、これまで随分と私のわがままに付き合ってもらいました。
ただ、もしあのまま園田にいたら小春を失った悲しみに、ひとりで押しつぶされていたかもしれません。そう考えると、引っ越してきて本当に良かったと思います」

暮らしの延長線上にあった猪名川町への移住。そして、その背景には“ちまこま喫茶”を通じて築かれた人々との繋がりが大きく影響していました。現在、51歳のみどりさん。

みどりさん:
「私、まだ生きてますね(笑)この世にまだ任務があるのかな」

2人と1匹、楽しい仲間たちとともに、猪名川町での穏やかな暮らしはこれからも続いていきます。

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