【空き家・移住開業のお話会】『田舎でお店をするってどんな感じ?』

こんにちは、地元ライターのアッコです!

少し(?)遅くなりましたが…2025年3月2日(日)に開催された、空き家・移住開業相談室「田舎の暮らしのお話会」の様子をお届けいたします!

この「お話会」は、空き家にまつわる情報や、知っておきたい法律・行政の動き、移住や開業した人のホンネ、そしてここだけの裏話?!などのお役立ち情報をざっくばらんにお話しする場。

2回目となる今回のテーマは、「田舎でお店をするってどういう感じ?」。
開業までの経緯や試行錯誤について、すでに開業された方や現在準備を進めている3組にお話を伺いました。

目次

【お家で開業:渡邊さんの場合】〜コーヒー焙煎工房「天使のはしご」〜

まずは、猪名川町のご自宅の庭に自家焙煎のコーヒー工房を持つ、渡邊智子さん。

「自分で焙煎したコーヒーを多くの人に届けたい。でも、どこで? どうやって?」と、悩んでいた時に出会ったのが、ムエさん大工職人のご主人よしさん

自宅開業について語る渡邊さん(左)と、そのお話を伺うムエさん(右)

大工職人のよしさん

2人は、よしさんの腕を活かし自宅敷地内に小屋を建て、お菓子工房「mouette」をオープン。
10年が経った今も、ムエさんは小さな小屋で美味しいお菓子を作り続けています。

自宅の敷地内に建てたお菓子工房「mouette」

「小屋は、役目を終えた後も別の用途に活用でき、資産にもなる」
ー自身の経験と”小さな工房の可能性”を渡邊さんにアドバイスしたムエさん。
その言葉に背中を押された渡邊さんは、自宅の庭に工房を構えることを決意。2人のサポートを受けながら、コーヒー焙煎工房「天使のはしご」を開業しました。

渡邊さん念願のコーヒー焙煎工房「天使のはしご」

開業は地域との関係づくりから

その際、最も気掛かりだったのは、周囲への影響。
工房がある渡邊さんのご自宅は、閑静な住宅地。焙煎の時にでる煙や騒音など、周辺に迷惑をかけるのでは…と、心配したと言います。

そこで、ご主人とともに焙煎したコーヒーを持って近隣の家々を訪れ、丁寧に説明して理解を求めました。
その結果、無事にオープンを迎えましたが、今でも年に一度はご挨拶に回っているのだとか。
「自宅で開業する場合、近隣とのコミュニケーションが何よりも大切だと思います」と、渡邊さん。

その姿勢から、自宅開業の大切なポイントは「関係づくり」。しかも、それは一度きりではなく継続的なものだと感じました。

お家開業のメリットと課題

打ち合わせ中の2人をパチリ♪

自宅で開業することのメリットについて尋ねられると、最初に返ってきた答えは「忘れ物がないこと」。
ー思わず笑ってしまいましたが、よく考えてみると意外と大事なことかもしれません。

一方のデメリットは、防犯面の不安。
ある日、なんと知らない人が自宅のリビングに立っていたことがあったとか(!)
以来、戸締まりを徹底するようになったそうですが、ちょっと背筋が寒くなるようなエピソードです。

工房オープン3周年記念イベント

渡邊さんの活動は、焙煎やコーヒー販売にとどまりません。
イベント出店やコーヒーやそれ以外の講座(発酵ドリンクetc)、レンタルキッチンなど多方面に渡ります。

2025年3月30日(日)には工房を飛び出し、日生の「サピエキッチンスタジオ」で、3周年を記念したイベントを開催!
「いつも応援してくださる皆さまに何か還元したい」と、プレゼントの用意も。
美味しいコーヒーとおしゃべりを楽しみたい方は是非足を運んでみてください!

詳しくはこちら▷▷▷コーヒー焙煎工房「天使のはしご」

【賃貸で開業:早川さんの場合】〜カフェ&シェアスペース「ハレバレ」〜

次にご紹介するのは、賃貸物件を借りて開業するケース。
2025年5月、川西市・一庫にカフェ&シェアスペース「ハレバレ」をオープン予定の早川梓さんです。

キッチンカーでお馴染みのソラカフェ「なないろじかん」のスタッフとしても活躍中の早川さん


お店となるのは、約100㎡の趣ある一軒家。
一般的な店舗の4〜5倍ほどの広さを活かしてカフェとシェアスペースが共存する場を作ります。
地域の人々が気軽に集える場所として、子育て世代や新しいことにチャレンジしてみたい方に嬉しい工夫が盛りだくさんの予定。▷▷▷カフェ&シェアスペース「ハレバレ」

ゆったりとした時間が流れていくような空間

賃貸で開業する際のポイント

池田くんからは、賃貸物件で開業する場合の注意点として「修繕の有無や構造上の問題を事前に把握することが大切」と説明がありました。
近年は資材価格の高騰などにより、改修や修繕には思った以上に費用がかかります。
そのため、「スモールスタート」を念頭に準備を進めていくことがポイントなのだとか。

ただし、早川さんの場合「父と兄が職人だからできること」として「全面改装」に踏み切ります。
ご家族のバックアップがあればこその可能な選択です。

「商工会議所」を活用して融資をスムーズに!

ーとはいえ、今一番不安なのは、やはり資金面。
当初、補助金の活用も考えましたが、時間的な余裕がなく断念しました。現在は、「日本政策金融公庫」 の申請を進めています。この際、池田くんから「商工会議所を通すと融資審査が通りやすい」と、アドバイスを受け相談を開始しました。

《早川さんの資金調達の3ステップ》
1. 商工会議所に相談し、創業計画&収支計画を作成
2. 担当者に添削してもらい、日本政策金融公庫に申請
3. 面談を経て、融資の可否が決定

早川さん(右)の開業をお手伝いをするのは池田くん(左)の「アイシンク設計事務所」

3月2日の「お話会」の時点では公、庫の面談待ちでしたが、その後無事に終了。
和やかな雰囲気で進み、手応えも感じられたようです。

商工会議所は、普段あまり馴染みのない場所ですが、会員でなくても相談は可能。
開業を考えている方にとって、資金調達の心強い味方になりそうですね!

人と人をつなぐ場所」へ

改修前の縁側でくつろぐ早川さん(左)とsahoさん(右)
「叶えたいことは言葉にした方がいい」というsahoさんの言葉がきっかけとなり、古民家探しが実を結びました

「地域の暮らしに溶け込み、人と人をつなぐ場所にしたい」と、語る早川さん。
このまま進めば、5月には「食べる、集う、繋がる」をキーワードにした、新しいコミュニティスペースが誕生します!今から楽しみ♪

【猪名川町最北端へ移住】〜カフェ開業と新規就農への挑戦〜

段々畑が広がる柏原の風景

最後にご紹介するのは、伊丹市にお住まいの別所則和さんご家族です。

移住先に選んだのは、猪名川町の最北部・大島地区にある柏原。
都市部へのアクセスが良い一方、地区のシンボル大野山を望む自然豊かな環境と知人がいることが決め手となり、
築100年を超える古民家を購入しました。

築100年を超える古民家への移住と開業には、「ムエこま工房」が全面サポート!

この土地で、奥さんの樹里さんはお嬢さん2人とカフェを、別所さんは脱サラして農業に挑戦する予定です。
※ 別所さんは現在単身赴任中のため、「お話会」にはご参加でいただけませんでした。

【関連記事】〜古民家の「現地調査」に行ってきました!〜

「住むだけ」から「開業OK」へ

別所さんが物件にたどりついた背景には、「大島小学校区まちづくり協議会」会長・奥村一夫さんの存在がありました。

この日、大島地区の課題と魅力についてお話しいただいた「大島小学校区まちづくり協議会」会長 奥村一夫さん


大島地区では高齢化が進み、空き家の増加が大きな課題のひとつ。
そこで奥村さんは猪名川町議員の福井和夫さんとともに地域の活性化を目指し、取り組みを進めてきました。

大島地区の魅力の歴史や自然に触れながら歩く「歴史ウォーク」が、4月から開催(参加費無料)

これにより、大島地区は2024年6月に「空き家活用特区」に指定され、これまで居住専用だった空き家をカフェや店舗など地域交流拠点として活用できるように。その第一号が、別所さんご一家です。

田舎ならではの「道路」の問題

猪名川町は上下水道も整備され、田舎暮らしの中では比較的便利なエリアですが、古い家には独特の課題も。
別所さんのお宅の場合は「道路」の問題が。

もともと住んでいた方が、農地の一部を生活道路として使っていました。
これは、昔ではよくあること。
ただ、現在では規制が厳しくなり、正式な手続きを踏む必要があります。
また、開業にあたっては、建築基準を満たす「接道」と呼ばれる正式な道路が必要に。
しかし、現状、道幅が1m足りず周辺の農地を購入して道路幅を広げなければいけません。
現在、農地転用の手続きを進めていますが、これに多くの時間をさいています。

さらに、接道が確保されていなければ工事に必要な大型車両の通行が難しく、資材運搬のための時間やコストが増すなど、移住や開業までのハードルは決して低くありません。

やりたいことに夫婦で挑戦

別所さんご家族にとっては、すべてが初めての挑戦。
一番の不安は、カフェの営業と農業だけで生活基盤を築けるのかという点です。
就農には、補助金や支援制度もありますが、未知の世界に飛び込む不安は尽きません。

カフェとなる離れに座る樹里さん(2024年9月撮影)

後日、樹里さんにお話を聞くと——
「もう、不安だらけ(笑)。でも、お互いやりたいことがあるのに、安定を優先して諦めるのはイヤなんです。
だから、試行錯誤すら楽しもうと決めました!」
夫婦で何度も話し合い「やらずに後悔するより、まずはやってみる」という結論に至ったそう。
「一緒に楽しんでくれる人が増えたら嬉しいです」とも。
不安をワクワクに変えながら、新たな挑戦を進める別所さん一家、全力で応援したいですね!

林田地区の空き家情報

ここで、猪名川町中部・林田地区にある空き家をひとつご紹介します。

☑︎築60年の母屋と離れに加え、広いガレージ付き。
☑︎敷地面積は800㎡。300㎡の農地も含まれています(※農地の利用には制限あり)
☑︎電気・上下水道は整備済み
☑︎現状では「未接道」ただし、「里道」(昔から使われてきた細い道)の払い下げを受けることで、接道できる可能性があります。
☑︎価格は、約600万円。

ー活用の幅が広がりそうな物件ですが、別所さんのケースと同様に、接道や農地転用の問題をクリアすることが鍵となりそうですね。

物件選びのポイント 〜後悔しないためにチェックしたいこと〜

物件を選ぶ際には、法的な条件や「接道」の問題以外にも、考慮する点がいくつかあります。

1.建物の状態を確認する

建物の老朽具合をしっかりチェック。
雨漏りや蟻害、木材の腐食などがあると、修繕に多額の費用がかかることも。
近年の建築基準法の改正により、大規模な修繕のハードルやコストが上がっているそう。
小規模な修繕で対応できるか確認しておきましょう。

2.手放すときのことを考える

将来の売却や解体を視野に入れて、物件のポテンシャルを評価することが大切。
また、景観の変化や(ソーラーパネルなど)周囲の土地利用も考慮に入れ、長期的な視点での物件を選びが求められます。

3. 優先順位をつける

いくら条件をあげても、理想の物件はなかなか見つかるものではありません。
条件を絞り、優先順位をつけること。空き家情報は突如出てくることが多いため、あらかじめの準備が吉!

4. 地元の人や知識のある人に相談する

周辺の事情や過去の災害情報など、地元の人から情報を得ることができれば、より良い選択につながります。
また、移住や開業には多くの注意点があり、個人だけで進めるのは大変です。
「ムエこま工房」でもサポートいたしますので、何か気になることがあれば、ぜひご相談ください!

交流&個人相談タイムと参加者の声

お話会の最後は、交流&個人相談タイムで締めくくられました。
ムエさん特製のシュークリームが振る舞われ、参加者の皆さんの表情もほころび、自然に会話が弾んでいました。

ムエさん特性のシュークリームに舌鼓

「開業に向けての準備の大切さがよく分かった」
「実際に開業した人の”生の声”が聞けて良かった」
「こんなに濃い話が聞けるとは思わなかった」

交流&個人相談タイムは和気あいあい

ーなど、参加者の方々からはたくさんの声が寄せられました。
特に多かったのは「面白かった!」という感想。
私も今回が初めての参加でしたが、本当に楽しく、あっという間の2時間でした。

sahoさん(右)も参加された方の相談に

ご参加いただいた皆さま、ご協力いただいた皆さま、ありがとうございました。

「大島まち協」会長の奥村さん(左)とともにご参加いただいた、猪名川町議員の福井和夫さん(右)
リラックスした雰囲気

「田舎の暮らしのお話し会」は、情報提供だけでなく相談相手や仲間を見つけることもできる特別な場所。
今後も引き続き開催していく予定です。
ぜひ「こんな暮らし、ちょっといいかも」と、思えるヒントを見つけに来てください。

まもなく4月。本格的な春の訪れに、私もなにか新しいことを始めてみようかな。
では、また!

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